白いお化け屋敷の思い出


幼い頃、父に連れられて出かけたことが何度かある。母の仕事は平日が休みだったので、それでもひと月かふた月に一度は日曜に休みをとって家族で出かけていたのだけど、母のいない日曜に父と二人で出かけたりもした。


その場所がどこかもわからないし、何の催しだったのかもわからない。場所全体のイメージも浮かんでこないのでかなり断片的にしか覚えてない。
その場所は、屋外で晴れていて土っぽく、風が吹いていたらきっと土埃がすごいんだろうというところだったことは覚えている。

わたしはそこではじめてサトウキビを手にして食べた。
めずらしいものとかいった思いはなくて、ただ甘かった。しかもその甘みを吸い取るとその部分は出さなければならないから、それも面倒に思えた。そのものを味わうというよりも、手ごろで食べなれた好きな菓子を食べるほうが嬉しかったという俗っぽさだ。


その場所で覚えていることがもうひとつ。
それが白いお化け屋敷になるのだけど、なぜ白いのかといえばそれは布だかビニールだかナイロンだか素材はわからないのだけど、白いシートで囲った通路でできたお化け屋敷だったから。
晴れた屋外で白いもので囲ってしまっても、それは直射日光があたらないという程度のもので、まるで普通だ。入っても入らなくても大差はない。
どういう経緯だったのか、わたしは一人でそれに入ったみたいなのだけど、どういう感情を持って挑めばいいのかわからなかったんじゃないかな。
紐を引っ張れば何かがすばやく動くという仕掛けがあったみたいだけど、怖くもなくびっくりもしない。


あの白昼夢はいったい何だったんだろうと、その記憶に繋がるキーワードを感じたときに思い出すが、欠けている部分が多くその部分が白っぽいものだから、余計に白昼夢らしさを強調してくる。それでもこのことについて追求心はないから、いつもそっとしておく。このくらいがちょうどいいのだ。