不機嫌な散歩 


不機嫌そうな顔をしたおじさんが犬の散歩をしているのとすれ違った。わたしは車だったのでそんなにじっと見ることはできなかったけど、もちろん歩いていたとしてもそんなにまじまじと見ることはできなかっただろうけど、どちらにしてもその人は不機嫌そうだった。

せっかくの愛犬との散歩に不機嫌だとはと一瞬思ったものの、あれは本当に不機嫌な顔だったのかどうか、簡単に決めつけてはいけないと留まった。もしかするとあのおじさんは愛犬との散歩が大好きでその時も機嫌はよかったのだが何か問題事を思い出したところで、ほんの一時顔が曇っただけかもしれない。またはやはり散歩は好きなのに、その散歩途中にとても哲学的なことを考えるのも同時に好きなのかもしれない。散歩は楽しんでいたけど頭の中では難しい哲学が渦巻いていたのかもしれない。


普通に姿を見ることができる場合、人の身体の表面から何かしらの情報を一瞬で捉えることができるけど、それはあくまでも表面上でのことであってその内はどうなっているのかわからない。本当に内の内まで知ろうとするにはよりたくさんの情報が必要で、しかし情報は本当か嘘かを見極めが難しいほど溢れている。



一瞬の映像からそんなことを考えながら運転とは関係ない部分の思考は暇つぶしをしていた。